伝統の技が生み出す信頼の姫鍬|堤製作所

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鍛冶叢書 かじそうしょ

堤章こと、旧姓遠藤章、三代兼光は、大正十三年に塩川町に生まれた。

昭和十六年に旧会津工業高校応用化学科を卒業し、入社した北海道人造石油では合成燃料の研究に携わる。終戦後、北支より復員すると、初代兼光に弟子入りし鍛冶の技を学んだ。

その後、昭和二十九年、堤家に婿養子として入ると、下駄屋だった家業を廃し鍬専門の野鍛冶を始めた。そして、商標「姫鍬」を生み出し、「ステンレス姫鍬」の開発をすることで全国展開するまでに成長していった。

のちに堤章は、著書『会津の野鍛冶』の中で多くの鍛冶が農具を生産し時代を担ってきた思いを書き残した。

農具考

「農用鉄器具」とは、農耕用の鍬や刈り穫り用の鎌などに代表される農具刃物であり、これらの殆んどは地元農具鍛冶の製作品であります。かつて、「鍬は万人の食を負い、斧鉈は万戸に暖を齎す」といわれたように、農具鉄器具は農業生産のみならず、もろ人の生活の原器でありました。……〈中略〉……

……昭和二十四年当時の会津には、これらの業に携わった農具鍛冶の数は、約百三十名の大きを数えました。……

半世紀前の日本は、生活の中心が鍛冶と共にあり、生きる源が食ならば、鍛冶は食を生み出す大切な存在だった。

しかし、文明の発展と共に存在したはずの鍛冶が、気がつけば存在自体が危うくなってきた。そこで情報の消失を恐れた堤章は、鍛冶の存在意義を後代に問うために、会津の鍛冶をテーマとした貴重な資料を残してくれた。

滅びの美学 - 刃物

自由鍛造「一品製作」の刃物類は伝統的鉄の工芸品であります。 いうまでもなく工芸品とは工匠人による作品でありますが生まれた工芸品のなかにはさまざまな運命が待ちうけています。

ひっそり建っているもの、桐箱に収められて愛蔵されるもの、貴婦人の装いとなるものや展覧品となるもの等いうなれば非生産的なものが多いようであります。

これにひき替え造形の用具となる刃物はどうでしょう。用材を挽く鋸、板を削り彫りこむ鉋や鑿、竹皮を裂く刀刃、これらを製作するのには熟練した異能的な技術がなくては叶いません。こうした刃物はやがて我が身を耗らされて……〈中略〉……遂には滅失するのが刃物の運命であります。日光の陽明門も運慶の仏像も刃物があってはじめてできました。ここで未完の美ー刃物の美を問い直してみようではありませんか。
平成六年八月二十三日 文責 堤 章

滅びゆく文化を嘆いた堤章は、人間が長い年月をかけて得たであろう知識や技術が、消えてなくなることに運命的な儚さや悲しみを当事者として感じていた。激動の昭和を生き、多くの近代遺産が消えることを嘆き堤章はこれらの原稿を書き始めたのである。

堤の著書は、鍛冶叢書 1『会津の鋸鍛冶』から始まるが、この本には鍛冶叢書とあることから、当初より鍛冶に関するシリーズ本を想定していたことがわかる。また、巻末には 「目下、創業三十年を記念して鍛冶仕事の内容を含めて『拾遺会津の鍛冶職』を発刊しようと整理中……」とあることから、壮大なテーマにして「鍛冶叢書」を 5 までまとめ上げたことが窺える。

折しも、昭和五十年代後半になると重長、重道、重延が火を落とし会津から刃物鍛冶が消えていった。昭和初期には四十軒ほどあった鋸鍛冶も数軒を残すのみとなり、野鍛冶が細々と槌音を響かせるだけになってしまった。堤章は、唯一、会津の地で生き延びることのできた堤製作所の行く末を思い、また鍛冶職の生きた証を後世に伝え残すという願いを込めて、これらの情報を集めまとめたのである。

会津の鋸鍛冶

鍛冶叢書 1
『会津の鋸鍛冶』

中屋保右衛門と保左衛門の周辺 1,000 円
1 会津の鋸鍛冶
2 鋸の材料玉鋼について
3 玉鋼による鋸の製法について
4 保右衛門鍛冶 
5 保左衛門鍛冶
6 関係鍛冶の系譜
余滴 鍛冶雑詠
資料 鍛冶一覧 60 頁

会津の鋸鍛冶

鍛冶叢書 2
『会津の刃物鍛冶』

藤井重正の周辺 3,000 円
1 会津の刃物鍛冶
2 近代会津の刃物鍛冶一覧・刃物鍛冶の系譜
3 初代重正とその門人
4 二代重正とその門人
5 『諸仁義帳』
6 会津の桐下駄とその刃物
7 関係刃物鍛冶略年表 余滴 鍛冶雑詠
参考 刀鍛冶一覧
188 頁 昭和 61 年刊

会津の鋸鍛冶

鍛冶叢書 3
『会津の鋸鍛冶』

近代の群像とその系譜 3,000 円
1 会津の鋸鍛冶
2 近代の群像とその系譜
3 大平鋸工場について
余滴 鍛冶雑詠
鋸鍛冶年代表 248 頁 平成元年刊

会津の鋸鍛冶

鍛冶叢書 4
『会津の野鍛冶』

その技と群像 4,000 円
1 野鍛冶とは
2 作品のあらまし
3 野鍛冶の用具と材料
4 野鍛冶の技
5 会津の農具とその製作法
6 拾遺(群像)
余滴 絵写真の「鍛冶屋五円」について
鍛冶雑詠
参考資料 会津野鍛冶組合員名簿(昭和十八年)
324頁 平成 3 年刊

会津の鋸鍛冶

鍛冶叢書 5
『軍刀組合始末』

陸軍受命刀匠の周辺 3,000 円
1 太平洋戦争と軍刀
2 軍刀組合とは
3 軍刀鍛冶―受命刀匠
4 軍刀組合の設立
5 東京第一陸軍造兵廠について
6 鍛刀について
7 研磨について
8 軍刀組合の成果
9 軍刀組合の解散とその後
10 軍刀組合始末 陸軍受命刀匠の周辺
鍛冶雑詠
付録 昭和十八年度福島県野鍛冶工業組合員名簿
188頁 平成 6 年刊

『鍛冶叢書』シリーズに関心のある方は、堤製作所までお問い合わせください。
簡易印刷にて再版しましたので若干ですが在庫がございます。